「製錬」とは鉱石から金属を取り出すことを言います。アルミニウムはボーキサイトという鉱石から取り出されます。
ボーキサイトにはケイ素、鉄、マグネシウムなどが含まれています。またアルミニウム自体も水酸化アルミニウムとして含まれています。これを純度の高いアルミニウムにする作業を経てアルミ缶などのアルミ製品に加工されます。
ボーキサイトからアルミニウムを取り出す過程で電気分解という工程があります。文字通り電気を使って純度の高いアルミニウムを取り出すことができるのですが、大量の電力が必要です。
アルミニウムを製錬するのに大量の電力が必要になることから、アルミニウムは「電気の缶詰」と呼ばれます。
日本で唯一のアルミニウム精錬工場
日本ではアルミニウムの原料であるボーキサイトが十分に取れません。ですがアルミニウムは加工がしやすい金属であり日本が先進国である以上、需要は高い金属です。身の回りにはアルミ缶や建造物などなど、様々なところで必要とされています。
そのため1973年・1979年のオイルショック以前、日本は世界でも有数のアルミニウム精錬国、つまりボーキサイトを輸入して純度の高いアルミニウムを作る国でしたが、オイルショックによって日本のアルミニウムの製錬は衰退していきました。
なぜ、オイルショックによってアルミニウム製錬が衰退したのか。それはアルミニウム製錬には大量の電力が必要不可欠だからです。当時は火力発電が主流だったため燃料の高騰により電力価格も高騰し、採算が合わなくなったのです。
ところが一社だけアルミニウム製錬を続けた工場があります。静岡県にある日本軽金属株式会社の蒲原(かんばら)工場です。この工場は水力発電によって電力を自給していたのです。南アルプスから流れる水が豊富なため水力発電が可能なのです。
残念ながら蒲原工場は施設の老朽化のため2014年3月でアルミ製錬業を終了しました。日本唯一のアルミニウム製錬工場が製錬を終了したため、現在の日本でアルミニウム生産はゼロになりました。アルミニウムは海外からの輸入に頼るかリサイクルによって供給しています。
海外のアルミニウム産業
日本はアルミニウムの原料であるボーキサイトを産出できない。火力発電が主流なので燃料費がかかる。そのためアルミニウム製錬には向かない国です。
世界で最もアルミニウム製錬している国は中国です。ボーキサイトの生産は世界で2位。原料が豊富なため日本よりアルミニウムの生産には有利です。また中国は工業化して発展しているのでアルミニウムの消費・生産とも世界1位です。
海外にはボーキサイトがたくさん採れ、水力発電が主流のアルミニウム製錬の条件を完璧に満たす国があります。その代表国は、アフリカのガーナです。ヴォルタ湖から流れるヴォルタ川にアコソンボダムというダムがあり、そこで水力発電をしています。ガーナの消費電力の50%以上の電力を供給しています。
しかしながら、ガーナは先進国ではありません。先進国の日本・アメリカ・中国のようにアルミを莫大に必要としていないので生産は少ないです。それよりガーナは金やカカオの輸出といった物を輸出します。ほとんど加工することなく輸出する一次産品を輸出します。原料やプランテーション作物を輸出するのは途上国の特徴です。