企業的穀物農業とは、広大な農地を大型農機具で耕して、商品用の農作物を育てる農業のことをいいます。新大陸を中心に行なわれていますが、分布はそれほど広くありません。そのため、企業的穀物農業では具体例を覚えてしまったほうが効率の良い学習が可能です。

この記事では企業的穀物農業の概要を説明した後、アメリカやアルゼンチンなどで展開されている具体例をそれぞれ確認していきます。

企業的穀物農業やアグリビジネスの特徴

企業的穀物農業とは、飛行機などの大型農機具を使って、広大な農地で単一の穀物を栽培する農業を指します。土地の面積あたりの生産性を示す土地生産性は高くありませんが、農地が広大な割に労働力は少ないため、労働量あたりの生産性を示す労働生産性は高いのが特徴です。企業的穀物農業は、おもに新大陸と呼ばれる南北アメリカ大陸・オーストラリア大陸で盛んです。新大陸では、土地が豊富にありますが労働力は少なく、労働力を節約するために大規模な機械化農業が盛んになりました。

また、企業的穀物農業は企業的農業の一つです。企業的農業とは外部からの資金や労働力を使って、商品としての農作物を栽培するものをいいます。単一の作物や家畜を集中して生産するため労働生産性が高いのが特徴です。企業的穀物農業以外の企業的農業として、企業的牧畜やプランテーション農業があります。

アグリビジネスとは、農業(agriculture)と事業(business)を掛け合わせてつくられた言葉です。農産物の生産だけではなく、加工などの第二次産業や流通・販売といった第三次産業を組み合わせた活動のことで、近年ではバイオテクノロジーを活用した遺伝子組み換え種子の開発なども手がけています。大規模なアグリビジネスでは、加工や販売、流通を国際的に大規模に行なうことで、輸出市場を支配するように。こうした多国籍企業は「穀物メジャー」と呼ばれています。穀物メジャーという言葉が使われ始めた1970年代は「ビッグファイブ」と呼ばれる5社が穀物メジャーとされていましたが、現在では、カーギル社とADM社の2社に再編されていました。

企業的穀物農業の具体例

地図帳などで「企業的穀物農業」の分布を確認すると、意外と分布の範囲が狭いことに気づきます。そのため「企業的穀物農業」の全体をざっくりと覚えるよりも、企業的穀物農業の具体例をすべて覚えておくほうが、効率の良い試験対策です。以下では企業的穀物農業の栽培作物やそれぞれの特徴を説明していきます。

アメリカの春・冬小麦、カナダの春小麦

北アメリカ大陸の西経100度線は、年間降水量500mm線とほぼ並行しており、プレーリー土と呼ばれる肥沃な黒土が広がっています。これらの地域はグレートプレーンズやプレーリーと呼ばれており、企業的穀物農業による小麦栽培が盛んです。

寒冷な北部地域では春小麦、温暖な南部地域では冬小麦が栽培されています。春小麦とは、春に種をまき、秋に収穫するもので、トウモロコシや大豆で輪作を行なうもの。一方で冬小麦は秋に種をまき翌年の初夏に収穫して、ジャガイモ・牧草・トウモロコシなどで輪作をします。一般的に小麦の栽培というと冬小麦のことを指しますが、冬を越さなくて良い春小麦であれば、寒冷な高緯度地域でも栽培が可能です。

春小麦が盛んなのはノースダコタ州・サウスダコタ州を中心とした北部の地域です。ノースダコタ州は米国内の小麦生産量2位を誇ります。冬小麦が盛んなのはカンザス州・オクラホマ州・コロラド州・モンタナ州など南部の地域です。カンザス州は米国内小麦生産量1位を誇ります。

カナダでは、アメリカ北部と同様に春小麦の栽培が盛んです。平原三州と呼ばれるアルバータ州・サスカチュワン州・マニトバ州を中心に栽培されています。

アルゼンチンのパンパの小麦、トウモロコシの混合農業

南米のアルゼンチンでは、パンパと呼ばれる地域で企業的穀物農業による小麦の栽培が盛んです。パンパとはパラナ川・ラプラタ川流域の草原地帯のことで、年間降水量550mm線を境に東側が湿潤パンパ、西側が乾燥パンパと呼ばれています。小麦が栽培されるのは湿潤パンパです。

アルゼンチンでの小麦栽培はトウモロコシとの混合農業です。混合農業とは作物栽培と家畜飼育を組み合わせた農業のことで、小麦などの食用穀物とトウモロコシなどの飼育穀物を輪作して、食用の穀物を確保しつつ家畜も飼育します。

オーストラリアのマリー川流域の小麦栽培

オーストラリアでは、マリー川流域で企業的穀物農業による小麦栽培が盛んです。マリー川流域は元々降水量が少ない地域でしたが、スノーウィーマウンテンズ計画により豊富な水が得られるようになりました。

スノーウィーマウンテンズ計画とは、降水量の多いオーストラリアアルプス山脈南東側の雪解け水を内陸川のマリー川流域へ引き込むため、貯水ダムと山脈を貫くトンネルを建設したものです。1949年に着工し、1974年に完成しました。

スノーウィーマウンテンズ計画で灌漑が改善されてはいますが、オーストラリアの小麦は干ばつの影響で、生産量変動の大きいことが特徴です。野菜や果樹の生産が増加し、小麦は減少気味であることも最近の傾向として挙げられます。

また、アルゼンチンやオーストラリアなど南半球では北半球と季節が真逆になるため、収穫・出荷時期が異なることが特徴です。北半球の小麦の収穫は6~8月が中心ですが、南半球では12~1月が中心です。

ウクライナのチェルノーゼム地域の小麦栽培

ウクライナのチェルノーゼム地域でも企業的穀物農業による小麦栽培が盛んです。チェルノーゼムとは東ヨーロッパからウクライナにかけて広がる肥沃な黒土のことです。

チェルノーゼム地域では、旧ソ連の時代にはコルホーズ(集団農場)やソフホーズ(国営農場)による集団農業が行なわれていました。集団農業とは、政府の計画によって農作物の生産が行なわれ、収穫した農作物は政府が買い上げる形態です。生産が非効率であったことや、農民の生産意欲が上がらなかったことなどから、生産は不安定でした。ソ連崩壊後は農業企業などによってこれらの大規模農場が引き継がれています。