国境は国と国との境界で、国の統治権がおよぶ領域を決めている線です。国境を巡る争いは、昔から現在に至るまで多く発生しています。なぜ国境を巡って、絶えず争いが発生するのでしょうか。

また国境には自然的国境と人為的国境の2種類があります。今回は自然的国境と人為的国境の違いや特徴、具体例などを解説します。国境の違いや特徴を理解すると、国境争いの原因や植民地支配の歴史的背景などがわかりやすくなるでしょう。

自然的国境のメリット、デメリット

自然的国境は、自然にある山や川、海などの地形によって決められた国境のことです。自然的国境は山岳国境、河川湖沼国境、海洋国境の3種類に分けられます。

山岳国境

山岳国境は山の分水嶺を利用した国境で、互いの国の隔離性は高く戦時には有利ですが、平和時の交流性に難があるのが特徴です。しかし、中にはヨーロッパアルプスのように、交流性が高く峠の交通が発達している場合もあります。

河川湖沼国境

河川湖沼国境は河川や湖沼を利用した国境で、古くから利用されてきました。隔離性は低く、交流性が高いのが特徴です。また、河道の変化によって国境紛争に発展しやすい難点もあります。

海洋国境

海洋国境は海を利用した国境で、隔離性、交流性ともに優れていますが、近年では排他的経済水域の設定で問題が生じやすいのが欠点です。日本は海洋国境のため、漁業や海底資源をめぐり、韓国やロシア、中国と排他的経済水域を巡って問題が発生しています。

山岳国境の具体例(ピレネー山脈、アルプス山脈)

自然的国境の具体例を挙げてみます。まず山岳国境の代表例としてフランスとスペインを隔てるピレネー山脈が有名です。

ピレネー山脈は2,000〜3,000m級の山も含まれており、冬場は雪も積もります。人々の行き来が自動的に減り、文化の違いも現れます。

かつてスペインはイスラム教が多数派だった時代がありますが、フランスがイスラム教に染まった歴史はありません。これはピレネー山脈の存在が影響しています。

またヨーロッパのアルプス山脈もイタリアとスペイン等の国境に当たります。それだけでなく、フランスとスイスの国境、オーストリアとイタリアの国境にもアルプス山脈が利用されています。

アルプス山脈には新期造山帯であり、非常に険しい山岳地帯になります。例えば、モンブランやマッターホルンは氷河に覆われ、山を越えることは非常に難しいです。

しかし、イタリアからヨーロッパ各地へ移動する際に要所となり、戦争や交易のために移動経路となりました。かつては峠道を徒歩や馬車で移動していましたが、現在ではトンネルが掘られ、自動車や鉄道での移動が可能になりました。

例えばモンブラントンネルはイタリアとフランスを結び、自動車での移動ができるようになりました。EU内では自由に国境を越えられるので、トンネル建設によってトラック輸送が爆発的に増えました。

河川湖沼国境の具体例(セントローレンス川、メコン川)

アメリカの五大湖のオンタリオ湖からセントローレンス川が大西洋に流れます。セントローレンス川はカナダとアメリカを隔てる国境を形成しています。

五大湖やセントローレンス川では水運が発達し、人々の行き来が活発な地域でもあります。例えば、船舶を利用すればオタワからトロント、デトロイトへの移動も可能です。特に自動車など重量のあるモノを運ぶときに船舶は便利な手段です。

海洋国境の具体例(ドーバー海峡、日本海)

イギリスとフランスはドーバー海峡によって分けられています。この海峡は英仏海峡とも呼ばれ、最短距離は34kmであり、程よく離れています。

1994年に鉄道トンネルが開通し、人々の行き来が活発になりました。なお自動車を乗せることもできるので、フランスからイギリスに自動車で移動することもできます。

日本海も海洋国境に分類されます。四方を海に囲まれているため、敵国から責められにくく、独立国家としての歴史は世界最長です。

河川や山脈といった明確な境界線がないため、領土問題も発生しやすいです。例えば、北方領土や竹島、尖閣諸島などがあります。

人為的国境のメリット、デメリット

人為的国境は人が決めた国境で、数理的国境・障壁国境・文化国境の3種類があります。数理的国境は緯線や経線を利用した国境で、歴史的に新しい国に多く見られます。障壁国境は、軍事境界線として作られた城壁や濠を利用した国境で、文化国境は民族・言語・宗教の違いを利用した国境です。

人為的国境は先住民の生活圏や文化と無関係に決められたものが多く、民族間の紛争を引き起こしやすい傾向があります。しかし植民地時代には、民族間の対立は支配の不満を民族間対立にそらすことができ、支配者側に好都合な面もありました。今現在もアフリカ諸国などで争いが後を絶たないのは、人為的国境も影響しています。

人為的国境にはメリットがないように感じるかもしれませんが、障壁国境の場合は周囲にあまり人が立ち入らず、自然が保護されることなどがメリットとして挙げられます。

また、アルザス・ロレーヌ地方のように河川湖沼国境を主張するフランスと、文化国境を主張するドイツとの間で、資源や土地利用をめぐり争いになったこともあり、一概に人為的国境が悪いとまではいえません。

人為的国境の具体例

人為的国境の具体例をいくつか挙げてみます。

  • 数理的国境
    • 北緯49度線、西経141度線(アメリカ・カナダ国境)
    • 北緯22度線(エジプト・スーダン国境)
  • 障壁国境
    • 北緯38度の軍事境界線(韓国・北朝鮮)
    • 万里の長城
    • ベルリンの壁
  • 文化国境
    • インド・パキスタン・スリランカ(元々は同じ植民地だったが、文化や宗教が異なるため別々に独立)

アフリカの国境線が直線的な理由

アフリカの多くの国は西洋諸国の植民地だったため、便宜的に地図上の緯線と軽線をもとに植民地の境界線が決められていました。独立後も植民地時代の境界線をそのまま国境とした国が多いため、アフリカの国境線は直線が多く見られます。

アメリカの州境界が直線的な理由

アメリカはヨーロッパの開拓者が移住して、人工的に直線の境界線をつくり分割しました。アメリカには広大な土地が広がり、自然的国境になるような山や河川が少なかったことも影響しています。

ただし、アメリカ初期に成立した州では自然的国境も見られ、すべての州境界が直線ではないことに注意しましょう。

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