焼畑農業や粗放的定住農業は熱帯地域で行われる自給的農業の一種です。しかし、日本人にとって馴染みのない農業形態であるため、苦手意識を持つ人は多いです。また教科書の記載も少ないため、深く理解するのは時間がかかります。

そこで、焼畑農業や粗放的定住農業について詳細に説明していきます。これを読めば、分布地域や栽培作物も含めて理解することができます。

移動式焼畑農業の仕組み

まず、移動式焼畑農業の仕組みについて説明します。移動式焼畑農業は以下のサイクルを順番に繰り返す仕組みになっています。

①火入れ
②耕作(1~3年)
③休耕(10~20年)


火入れを行う際には大規模な山火事を起こさないように、焼き払う範囲を決めます。なぜ火入れをするのかというと、草木を焼き払うことによってできた灰が、土を耕作に適したものにしてくれます。また焼き払いによって害虫や雑草を取り除くといった効果もあります。

火入れの後はハック(堀棒)を使って耕作をします。焼畑農業ではあまり深く土を耕すことはありません。ハックのような簡単な農具を使って軽く耕す程度です。

焼畑農業の耕地は十分に休ませてから使うため地力(土壌の農作物を育てる力)が高く、草木灰により耕作に適した土壌になっています。ですからこのような簡単な耕作でも十分に農作物が育つのです。

1年から3年同じ場所で耕作をすると、その土地は10~20年間休耕させます。休耕させる主な理由は地力が低下するからです。また時間が経つにつれて雑草や害虫が侵入してくるようにもなります。草取りなどに手間をかけるよりは、別の土地で新たに焼畑をしたほうが合理的なのです。

なお同じ場所で連続して焼畑は行いません。耕作した土地をしっかり休ませないと地力が回復しないからです。焼畑農業は肥料を使いませんから、地力の回復も自然に任せているのです。

10年から20年の休耕期間を過ぎると、再び同じ場所に戻って焼畑をします。このように10年以上のサイクルでいくつかの耕地を移動しながら焼畑を行うことから、「移動式焼畑農業」と呼ぶのです。

焼畑の分布地域:熱帯雨林やサバナで盛んな理由

ではなぜ熱帯地域で移動式焼畑農業が盛んなのでしょうか。熱帯地域の土壌はラトソル(紅土)といって、酸性で栄養分に乏しい土が多くを占めています。ラトソルは農作物栽培に適していません。

一方で熱帯地域には熱帯雨林が豊富にあります。熱帯雨林を焼いて、アルカリ性の草木灰で酸性のラトソルを中和すれば、農作物を育てるのに適した耕地が出来上がるのです。

また熱帯雨林では木々が鬱蒼(うっそう)と生い茂り、日光が地面まで届きにくくなっています。これも熱帯雨林のままでは農業に適していない理由の一つです。しかしこれも焼畑をすることで日照量が増えて農作物を育てやすくなるのです。

このように熱帯地域で農業をするために工夫された方法が焼畑農業の起源になります。焼畑が分布している具体的な地域としては以下のような場所があります。

・南米アマゾン川流域(セルバ)
・アフリカやインドネシアの熱帯雨林
・アフリカのサバナ

サバナ気候(Aw)は乾季のある熱帯気候であり、草原が広がるイメージを持つかもしれません。しかしながら、熱帯雨林気候(Af)に近いサバナでは森林が広がります。そうした地域では焼畑が盛んに行われます。

一方でステップ気候(BS)に近い地域のサバナでは草原が広がり、焼畑は行われなくなります。その代わり、乾燥に強い綿花や落花生が栽培されることが多いです

焼畑ではタロイモやヤムイモ、キャッサバを栽培する

移動式焼畑農業ではどのような農作物を栽培しているのでしょうか。主に育てるのは、自分たちが食べるための自給用作物で、栽培が簡単なものです。

熱帯雨林ではキャッサバ・タロイモ・ヤムイモといった芋類が育てられています。こうした作物は栽培が簡単であり、茎を土に挿すだけで根が出て勝手に育ちます。これを根栽農耕(こんさいのうこう)と呼びます。

中でもキャッサバは栽培が簡単であり、キャッサバが特に多く栽培されています。ちなみにキャッサバはタピオカの原料でもあり、加工してパンにすることもできます。

なお、サバナでの焼畑は熱帯雨林と違い、モロコシ・アワ・ヒエ・キビなど雑穀類が主に栽培されています。

焼畑農業は環境破壊につながるのか?

焼畑農業は環境破壊だと誤解されることがあります。確かに木々を焼いて農地にする農業といわれると、熱帯雨林を次々に破壊していっているように思ってしまうかもしれません。

しかし先ほども説明したとおり、伝統的な焼畑農業は10年以上かけて土地を再生させながら、耕地として利用しています。熱帯雨林を無計画に破壊しているわけではありません。

環境破壊どころかむしろ持続性のある農業といえるのです。なぜなら焼畑農業は化学肥料などに頼って地力を回復させるのではなく、自然の力に任せているからです。

私たちが「焼畑農業による環境破壊」として目にする写真等は、プランテーションなど大規模な森林開発による焼き払いであることが多いようです。

一方で焼畑農業による環境破壊も発生する場合もあります。それは自然が回復する期間よりも短いサイクルで移動式焼畑農業を行うことです。


地力が十分に回復していないのに焼畑をすると、地力は次第に下がってしまいます。そして限界を超えてしまうと、その土地は塩害などにより砂漠化してしまい回復しなくなるのです。

近年では人口の増加により、こういった短いサイクルでの焼畑農業が行われているのも事実です。

粗放的定住農業(原始的定着農業)の仕組み

次に粗放的定住農業(原始的定着農業)について説明します。まず粗放(そほう)という聞き慣れない言葉の意味について解説します。粗放とは自然力の働きを主に使うことで、労働力やお金をかけないという意味です。

先ほど説明した移動式焼畑農業も粗放的な農業です。あまり深く耕しませんし、肥料も使わないなど、労働力やお金をあまりかけていないことが分かると思います。粗放的であるということは省エネ・エコであるともいえるのです。

粗放的定住農業をわかりやすくいうと、「焼畑農業+定住」ということです。移動式焼畑農業は数年サイクルで住居を移動しますが、粗放的定住農業は耕地は変えるけれども住居は同じ場所というイメージです。

同じ場所で住むようになったため、焼畑だけではなく常畑(じょうばた、私たちが一般的にイメージする畑のこと)も持つようになります。農作物も焼畑農業で育てる作物に加えて、トウモロコシやジャガイモなども育てるようになりました。

粗放的定住農業の分布地域

次に粗放的定住農業が分布している地域を紹介します。まず、メキシコ南部やアンデス山脈です。これらの地域は標高が比較的高く涼しいため、熱帯では育たないトウモロコシやジャガイモを育てています。またリャマやアルパカなどといった家畜の飼育もしています。

他には東南アジアや西アフリカでも粗放的定住農業が見られます。こちらの地域では自給用農作物だけではなく商品作物も育てているのが特徴です。

カカオやアブラヤシなど商品作物も栽培

移動式焼畑農業では自給用農作物しか育てていませんでしたが、粗放的定住農業になると商品作物を栽培する地域も出てきました。

例えば東南アジアではアブラヤシ、西アフリカではカカオが栽培されています。特にカカオは陰樹(いんじゅ)といって他の木の陰で育てなければいけないため、大規模なプランテーションでの栽培には向いておらず、こうした粗放的定住農業に適しているのです。

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