アジア式稲作農業とは、アジアで行われている家族経営が中心の稲作農業です。多くの労働力を必要とするため、集約的稲作農業とも呼ばれます。

アジアの米生産量は、現在では全世界の9割を占めていますが、アジアの米生産量が向上したのは戦後の緑の革命以降のことです。

今回は、アジア式稲作農業の特徴を説明します。集約的稲作農業や緑の革命の詳しい説明や、米の生産量・輸出ランキングなども確認していきましょう。

アジア式稲作農業は降水量の多いモンスーン地域で行われる

アジア式稲作農業には、安定した降水量と肥沃な土地が必要です。そのため、降水量の多いモンスーン地域の三角州を中心に行われています

モンスーン(季節風)は、夏と冬で吹く方向が逆になる風のことで、夏は海から大陸へ、冬は大陸から海へ向かって吹くのが特徴です。

稲作にとって重要な雨は、夏の季節風によってもたらされます。東アジアでは南東から、東南アジアからインドにかけては南西から湿ったモンスーンが吹き込み、安定した降水量をもたらすのです。なおモンスーンはフィリピンを境に風向きが異なることに注意しましょう。

また三角州は、川が上流から運んできた土砂によってつくられる沖積平野の一種で、河口部にできます。三角州は、川の上流から養分が流れてくるため、栄養分が豊富です。

このようにモンスーンが吹くデルタ地帯では、水を確保できること、広大な土地を確保できることから、アジア式稲作農業に適しています。

アジア式稲作農業が行われている代表的な場所として、長江、チュー川、ホン川、メコン川、チャオプラヤ川、エーヤワディー川、ガンジス川の中下流域が挙げられます。

これらの川を暗記するには「校長のチューはホンマ、メッチャ、ええ感じ」と覚えると良いでしょう。

なおアジア式稲作農業でポイントとなるホワイ川(後述)についてはゴロに含まれていないので注意しましょう。校長先生が「why?」と言っている姿をイメージすることで、黄河と長江の間を流れる川だと覚えると良いです。

また、デルタ地域以外でもアジア式稲作農業は行われています。例えば棚田です。棚田とは、斜面を切り開いて階段状に水田をつくることで、棚を並べているように見えることから棚田と呼ばれています。

棚田で稲作が行われる条件として、人口密度が高く平地だけでは土地が足りない、水に恵まれていることが挙げられます。棚田が盛んなのは、日本やインドネシアのジャワ島、フィリピンなどです。

年間降水量1,000mmを基準に稲作と畑作に分かれる

アジア式稲作農業は降水量の多い地域で行われており、年間降水量1,000mmが基準です。例えば中国では、ホワイ川が年間降水量1,000mmの境界にあたります。

ホワイ川以南の長江中下流域、四川盆地やチュー川流域では稲作が盛んですが、ホワイ川以北では一転して畑作が盛んです。このように年間降水量1,000mmを境として稲作か畑作かがはっきりとわかれます。

インドでも年間降水量1,000mmが稲作と畑作の境目となっています。稲作が盛んなのは、夏のモンスーンが吹き付けるガンジス川中下流域、インド南西沿岸部です。これらの地域よりも内陸部では年間降水量が少なくなり、畑作が中心となります。

集約的稲作農業は土地生産性が高く、労働生産性は低い

農業を考えるとき「粗放的」「集約的」のどちらかを意識しておくことが重要です。それぞれの概念は以下のようになります。

粗放的農業の代表例として、焼畑農業があります。一方で集約的農業の代表例としてアジア式稲作農業や園芸農業などがあります。

なお集約的稲作農業の「集約的」とは、労働力を多く投入する「労働集約的農業」や資本を多く投入する「資本集約的農業」があります。

資本集約的農業はアメリカの小麦栽培のように近代的機械を利用したスタイルになります。一方でアジア式稲作農業の「集約的」とは「労働集約的農業」のことです。これは人を使って効率良く農業をするスタイルになります。

そうした結果、アジア式稲作農業では、一定の面積あたりでどれだけの作物が育つかという土地生産性が高めです。

一方で、少ない土地に多くの労働力を投入するため、労働量あたりの生産性は低い特徴があります。

また温暖な地域では、二期作も行われています。二期作とは同じ土地で1年に2回同じ作物を作ることです。同じような用語として二毛作がありますが、二毛作は同じ土地で1年に2種類の作物を作ります。

同じ作物を作るか違う作物を作るかが二期作と二毛作の違いです。二期作は中国華南地域のほか、チャオプラヤ川流域などで盛んです。二毛作の例としては、中国華中地域で米と冬小麦などが栽培されています。

緑の革命により米の生産量が増えた歴史

次に、緑の革命によりアジアの米生産量が大幅に増えた歴史を紹介します。第二次世界大戦後、アジアの発展途上国では人口爆発が起こり、食糧危機が危惧されていました。

食糧危機を解決するため、1960年代後半から先進国で改良された高収量品種の導入が進みました。これが緑の革命です。改良品種のおかげで土地生産性は大幅に上昇しましたが、課題もあります。

例えば改良品種の育成には、灌漑施設の整備や大量の化学肥料・農薬が必要です。そのため管理にかかる費用は高額になり、小規模農家は導入したくても導入できません。灌漑が整備できない地域も導入が不可能です。

こうしたことから、農村内部や地域間での格差が拡大してしまいました。ほかにも、化学肥料・農薬を大量に使うことによる環境汚染も問題となっています。

米の生産量ランキングはアジア式稲作農業国

米生産量ランキング上位国の特徴を説明します。グラフを見ると上位のほとんどがアジアであることがわかります。

もともと米は中国長江流域が原産地とみられており、高温多湿でデルタ地帯など肥沃な土地が多いアジアの気候に適した作物であることが理由でしょう。また緑の革命をきっかけに生産量が向上したことも要因になります。

アジアのなかでも、長江やチュー川など長大な河川と広大なデルタ地域をもつ中国や、同様に広大な土地を持つインドが圧倒的な生産量を誇っています。

米の輸出国ランキングの特徴

次に輸出国のランキングを見てみましょう。先ほどの生産量ランキングとは少し状況が異なり、中国はランク入りしていません。

中国がランク入りしていない理由としては、中国の米生産は自国での消費が多く、輸出が少ないことが挙げられます。全体的にアジア式稲作農業は自給的性格が強めです。

一方で、タイやベトナムでは、人口がさほど多くないため自国での消費が多くありません。加えてタイやベトナムでは、緑の革命が大成功し生産量が向上したため、余った米の輸出が可能なのです。

インドもタイやベトナムと同じように緑の革命が成功した国です。自国消費量を上回る生産量があるため、輸出量で第3位となっています。