オアシス農業とは乾燥地帯で行われている灌漑農業です。中学校の社会で学習したセンターピボットなども数ある灌漑農業の一つです。このように灌漑農業には様々な種類の農業形態が存在しています。

そこで高校地理では灌漑農業の一つであるオアシス農業について理解を深める必要があります。例えば、外来河川の分布や地下水路の形成に関してはオアシス農業と深い繋がりがあり、問題を解く上で重要なキーワードとなってきます。

そのためこの記事ではオアシス農業の特徴や分布について、地域の自然環境を踏まえて、詳しく説明していきます。

オアシス農業は乾燥地帯で行われる灌漑農業

農業をするには降水量が必要不可欠であるため、乾燥地帯では降水量が少ないため農業に不向きな地域になります。しかし、地下水や湧水、外来河川などの水を利用すれば例外的に農業は可能になります。

地下水や湧水、外来河川などの水を利用して、乾燥地帯で行われている農業のことをオアシス農業といいます。そのためオアシス農業はナイル川流域やサハラ砂漠付近、イラン高原付近などでよく見られます。

ただし、水が得られると言っても乾燥地帯ですので、どの農作物も栽培できるわけではありません。例えば、乾燥地帯では暑さや乾燥に強いナツメヤシ、小麦、綿花などの栽培が盛んに行われています。

特に乾燥地帯で栽培されている作物として有名なのが、ナツメヤシです。詳細は後述しますが、「オアシス農業といえば、ナツメヤシ」と覚えるようにしましょう。

外来河川ではオアシス農業が発達しやすい

まず外来河川とは水源が湿潤で降水量の多い地域にあり、下流で乾燥地域に流れ込む河川のことです。外来河川でオアシス農業が発達しやすい理由は沿岸で水が容易に得られるからです。

このように乾燥地帯では降水量は少ないが、外来河川を利用して農業が行われていることが多いです。例えば、東アフリカのナイル川は代表的なオアシス農業地帯になります。ナイル川を衛星写真で見ると、一目瞭然です。

中央を流れるのがナイル川であり、両側が緑色の農地であることが分かります。しかし、水を運べる範囲を超えてしまうと、砂漠地帯になり農業ができない土地になってしまいます。

またイラクに位置するチグリス・ユーフラテス川やパキスタンに位置するインダス川の下流付近ではオアシス農業が発達しています。これらの外来河川を知っていれば、その付近でオアシス農業が行われている可能性が高いので覚えておきましょう。

地下水路(カナート、フォガラ、カレーズ)を利用する意味

外来河川がない地域では地下水路を利用してオアシス農業をする傾向があります。地下水路を作る前は地下水を割り当てても農地まで運ぶ必要がありました。また地上に水路を作ると水が蒸発してしまうといった課題も存在しました。

しかし地下水路を作ることでこれらの課題が解決しました。そして、その後は様々な地域で同様の地下水路が発達していきました。

これらの有名な地下水路の名称ですが、試験に出やすいので覚えておきましょう。イランはカナート、北アフリカはフォガラ、アフガニスタンはカレーズと呼ばれています。ただし、名前は違っても同じものです。

また地下水路は人口的に作られているため定期的にメンテナンスが必要です。地下水路の内部では壁面が土で時々崩れることもあれば、ゴミが詰まって水の流れが悪くなる時があります。

こうした際にメンテナンスのため人間が地下水路に降りるための縦穴が存在しています。衛星写真で見ると以下のように縦穴が連続しています。

これらの縦穴を見ると最終的には写真のように畑に水を供給していることが分かります。なお、この畑で栽培されるのは前述の通り、ナツメヤシや小麦など感想に強い農作物になります。

センターピボット方式をするオアシス農業もある

効率的な農業をするためにセンターピボット方式と呼ばれる農業形態があります。まずセンターピボットでは地下水を利用して大規模に作物を栽培するため、スプリンクラーを使用して水をまく灌漑農法のことです。

センターピボットが用いられている有名な地域はアメリカの中西部のグレートプレーンズです。他にもサウジアラビア、エジプト、オーストラリアなどで行われています。

仕組みとしては農地の中心から地下水を汲み上げます。その後、肥料を混入し、散水アームを使用してコンパスで円を描くように広範囲に水を撒きます。そのため衛星写真のように農場の形は巨大な円形になっています。

センターピボット方式を用いると少ない人手で効率的に農業ができるといったメリットがあります。これを専門用語で「土地生産性が高い」と言います。

しかしその反面、センターピボット方式にはデメリットもあります。それは過度な灌漑による水資源の枯渇や散布する水の中に含まれている農薬が水質汚染などの原因となっています。

オアシス農業が行われる地域分布

オアシス農業をする上で抑えておくべきポイントが2つあります。まず1つ目は「乾燥地帯であること」です。そして2つ目は「地下水や外来河川の水を利用できること」です。

そうした条件を確認しながら、具体的なオアシス農業の地域を確認して行きましょう。

エジプト(ナイル川流域)のオアシス農業

エジプトにはサハラ砂漠と呼ばれる国土の95%を占める広大な砂漠があります。そのためエジプトでは降水量が少なく、ナイル川から全ての水を得て、オアシス農業をしています。

エジプトの3.8%が農地となっていますが、これらの農地が位置する場所があります。そこはナイルデルタと呼ばれるナイル川の支流が広がる肥沃な三角州です。ここでデルタとは三角州を意味します。

緑色の部分を拡大してみると、以下のように農地として開拓されていることがわかります。

そして、ナイルデルタでは小麦やメイズ(とうもろこし)の栽培が盛んに行われています。エジプトでは世界一の長さを持つナイル川とナイルデルタによって古代から農業が続けられている深い歴史があります。

アラル海沿岸では過度な灌漑が問題になった歴史がある

ウズベキスタンでは大規模な灌漑が行われた結果、深刻な問題に直面した歴史があります。1960年ごろ、アラル海周辺が植民地であった旧ソ連が綿花の栽培を始めました。

そのため膨大な水が必要となり、アムダリア川とシルダリヤ川に流れる水を利用しました。その結果、綿花の生産は増加しましたがある問題に直面します。

それはアムダリア川とシルダリヤ川は世界第4位のアラル海に水を供給する川であるということです。このような過度な灌漑が原因でアラル海へ流れる水量が減少して、アラル海の水位は低下しました。

衛星写真で見るとアラル海は元々、水色で囲まれた部分の面積がありました。しかし過度な灌漑によって大部分が干上がってしまいました。またアラル海が縮小する前は漁業が盛んでしたが、これも過度な灌漑によって衰退していきました。

このように過度な灌漑をすると豊富な水が得られ、一時的には農作物の収穫を増やすことができます。ですが、長期的に見ると環境破壊に繋がる恐れがあります。

サハラ砂漠やイラン、中央アジアの乾燥地域

上記以外にもサハラ砂漠の外来河川流域ではオアシス農業が盛んに行われています。例えばニジェール川は外来河川であり、その水を利用して農業が行われます。

またイランや中央アジアでは高山地帯の雪解け水が地下水になります。そうした水脈を掘り当てて、カナートなどの地下水路を作り、オアシス農業に発展しました。

オアシス農業の栽培作物はナツメヤシ

オアシス農業で育てられている有名な作物はナツメヤシです。「ナツメヤシ=オアシス農業」と考えても問題ありません。

ナツメヤシは現在のイラク周辺が原産地と考えられるヤシの一種です。そのため乾燥にとても強く、日光を好む植物として知られています。

しかし、ナツメヤシは高温多湿の熱帯地域で育つアブラヤシは名前が似ています。そのため間違いやすく、試験にも出題されやすいので注意しましょう。


またオアシス農業では綿花、小麦や米も栽培されています。しかし世界中で栽培されているので、ナツメヤシのようにオアシス農業に限定した作物ではないので「小麦=オアシス農業」とは考えないよう注意しましょう。

自給自足のために様々な農産物を作る

オアシス農業では基本的に自給的農業を行っています。自給的農業とは生産物を生産者が自ら消費するために行われている農業形態のことです。

自給的農業では小麦や大麦、乾燥に強いナツメヤシなど主食として用いられる作物が長年栽培されています。また暑さや乾燥に強いカリフラワーやブドウなどの野菜や果実の栽培も行われています。

自給的農業の特徴として、栽培する農作物の品目が多くなります。一方で、プランテーション農業では1つの農作物に集中するため、品目数は少なくなります。

なお、自給的農業の作物は基本的には食用です。天然ゴムやアブラヤシなど食用ではない農作物は栽培しないことが多いです。

まとめ

灌漑農業とは河川・湖・地下水路などから農作物を育てるために必要な水を人口的に引いて栽培することを意味します。

その灌漑農業の一つであるオアシス農業は乾燥地帯で近くに外来河川もしくは高い山脈がある中央アジア、西アジア、北アフリカの地域で行われています。

このような灌漑農業では暑さや乾燥に強いナツメヤシや小麦、綿花などの自給的作物が育てられています。
しかし地下水の過度な利用や灌漑によって水資源の枯渇や湖の減少が進んでいるという現状があることも確かです。

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