園芸農業では野菜や花卉(かき)などの栽培が行われる農業になります。中学校で学習する促進栽培や抑制栽培も園芸農業の一種です。

高校地理では世界で行われる園芸農業についても理解する必要があります。また、「集約的」「商業的農業」といった専門用語の理解も必要になります。そこで、園芸農業の特徴、世界的な分布などを踏まえて、詳しく説明していきます。

園芸農業では野菜、花卉(かき)、果物が栽培される

園芸農業とは大都市に向けて新鮮な野菜、花卉(かき)、果物を栽培し届ける農業です。出荷先である大都市では他の地域に比べて野菜の消費量が多いです。このことは地方よりも人口が多いことや観光に訪れる人が多いことからも想像できると思います。つまり大都市では野菜の需要が高いということです。

そのため大都市で野菜を販売すればすぐに売れます。このように、すぐに売れる商品を「市場性が高い商品」と言います。園芸農業ではこのような市場性の高い商品を狙って栽培を行っているのです。

このように、農作物を販売することを目的としたスタイルを「商業的農業」と呼びます。一方で、自分たちで消費するために栽培するスタイルを「自給的農業」と呼びます。

花を栽培したところで、食用にできるはずもありません。そのため、園芸農業は商業的農業と言えます。

園芸農業は集約的農業であり土地生産性は高い

また、農業を考えるとき、「集約的農業」「土地生産性」と言った専門用語を理解する必要がありますので、それぞれ言葉の意味を見ていきましょう。

集約的農業とは、多量の資本・労働を投下して、効率よく利用する農業経営のことです。要するに、工夫を重ねて効率性を高めた農業スタイルと言えます。

その逆に、単位面積当たりの資本・労働の投下が少なく、自然の力を頼る農業経営のことを粗放的農業といいます。この場合、それほど工夫をせずに、適当に栽培する農業をイメージするといいです。

さらに、土地生産性についても説明します。これは単位面積当たりの生産量のことを指します。数式で表すと「生産量÷面積」になります。そのため、土地生産性が高いとは、小さい面積で多くの生産量がある多い状態のことを言います。
逆に広い面積でも収穫量が低い場合は土地生産性が低いと言えます。それでは園芸農業では上記のどれに当てはまるか確認していきましょう。

前提として大都市周辺では農業用の土地が少ない場合が多いです。つまり限られた土地でいかにして多くの作物を作るかが重要になります。

そのため園芸農業では肥料や農薬などを多く投入することで収穫量を増やし、土地面積の狭さを解決しています。

以上のことから園芸農業は、狭い土地でも多くの資本を投入しているため集約的農業と言えます。同時に単位面積当たりの収穫量が多く、土地生産性が高いとも言うことができるでしょう。

農業が集約的であること、土地生産性が高いことの2点は園芸農業の特徴として押さえておいてください。

近郊農業と遠郊農業の違い

園芸農業を細かく分類すると近郊農業と遠郊農業に分けられます。様々な用語が登場すると混乱しやすいので、以下のようにまとめました。

近郊農業とは大都市の近くで野菜や花卉、果実を栽培し都市部へ出荷する農業のことです。大都市の近くで栽培するメリットとして輸送費があまりかからないことや、野菜にとって大事な商品価値を上げる新鮮さが保たれることが挙げられます。

このように必要なコストを少なくし、販売する金額を高くすることで儲けやすいように工夫がされているのが近郊農業の特徴です。

一方で遠郊農業とは大都市から遠く離れた場所で、大都市に出荷する目的で野菜や花卉、果実を栽培する農業です。

輸送技術の発達により、作物の鮮度をあまり落とさずに大都市まで運べるようになったことで可能となり発達してきました。

大都市から離れて栽培するメリットとして地価がやすいことや、大都市と違う気候を利用して栽培できることなどが挙げられます。

そこで、大都市と違う気候を利用することでなぜメリットとなるのか、遠郊農業における2つの栽培方法と一緒に紹介していきます。

遠郊農業(輸送園芸)は促進栽培と抑制栽培に分類される

促成栽培とは、冬でも暖かい気候の地域で行われる遠郊農業で、作物の出荷時期を早める栽培方法です。
冬でも暖かい気候の特徴を活かして、夏の野菜をあえて冬に作っているのです。この促成栽培の例として、ビニールハウスや温室で暖かさを確保して栽培するやり方があります。比較的暖かい気候とはいえ冬なのでこういった保温できるものが使用されます。

一方で、抑制栽培とは、夏でも涼しい気候の地域で行われる遠郊農業で、作物の出荷時期を遅らせる栽培方法です。こちらは夏でも涼しい気候を活かして、冬の野菜をあえて夏に作っているのです。

抑制栽培の例として、高冷地で作られた高原野菜などがあります。標高が高く寒冷な土地を利用することで冬の野菜を夏に栽培することができます。

以上の特徴を持つ促成栽培と抑制栽培、この両者の共通点は都市部と異なる気候を活かすことで、出荷時期をずらすことです。

季節外れの作物は栽培するのが困難であるため、市場での希少価値が上がり、本来より高い値段で売ることができるというメリットにつながるのです。

世界で園芸農業がおこなわれる地域は限られている

さて園芸農業の分布と特徴について紹介していきます。園芸農業は、アメリカ東海岸、西ヨーロッパなどに点在しています。

これに加えて日本の近郊農業や遠郊農業について理解すれば試験対策として十分ですので、一つずつ具体例を確認していきましょう。

アメリカはメガロポリス周辺の園芸農業が盛ん

メガロポリスとはアメリカの巨大都市圏のことで、アメリカ北東部に位置します。


メガロポリスには、ボストン、ニューヨーク、フィラデルフィア、ワシントンD.C.などの大都市があるため、そこへ鮮度の高い野菜を届けるためにメガロポリス周辺では近郊農業が盛んになっています。主に野菜を作って出荷しているのが特徴です。

ちなみに、フロリダやメキシコ湾岸地域では温暖な気候を活かしてフルーツを栽培し、大都市(メガロポリス)に販売します。この場合は遠郊農業(促進栽培)が行われていることになります。

オランダはポルダーを活用したチューリップ栽培

オランダでは主にチューリップを育てて、パリなどの大都市をはじめ近くのEU諸国に出荷しています。ではなぜオランダでチューリップの園芸農業が発展したのでしょうか。前提として、ヨーロッパの庭園でチューリップは人気であるため需要があります。

オランダで栽培をすれば、イギリスやフランスなどに近いため、消費地までの輸送コストを低く抑えることができます。

しかし、水はけが良い土地でなければチューリップ栽培は不向きでるといった問題があります。この問題を解決するために、風車を作り、土地改良を行うことで大規模にチューリップが栽培できるようになりました。

このような土地をポルダーと呼びます。これだけ資本を投入して土地改良をしても、綺麗なチューリップは高値で売れるため採算を取ることが可能なのです。

日本の園芸農業の代表例

日本の園芸農業の代表例として、北海道のタマネギ、千葉県のネギ、高知県のナス、群馬県・愛知県のキャベツ、栃木県のイチゴなどがあります。以下で、それぞれ少し詳しく説明します。

まず、北海道はタマネギ、ニンジン、ジャガイモなどの栽培量が多いです。さらに、牛肉や牛乳の生産量も多いためシチューの具材は北海道がナンバー1だと覚えておくと良いでしょう。

これまでの学習を理解していると、東京都に近いことから千葉県では近郊農業を行っていると推測できるとおもいます。

また、夏の野菜であるナスは高知県で冬から春に促成栽培されている代表的な野菜として有名です。そして高原野菜であるキャベツは本来であれば冬に栽培されますが、群馬や愛知では抑制栽培を行い夏に栽培されるのです。

栃木のイチゴは「とちおとめ」という銘柄が有名です。イチゴも野菜であるため覚えておくと良いでしょう。

まとめ

園芸農業とは大量消費地である大都市に向けて新鮮な野菜、花卉(かき)、果物を栽培し届ける農業で、近郊農業と遠郊農業に分類されることを学習しました。

近郊農業の特徴としては大都市の周辺で行われること、狭い土地に多くの資本を投下するので土地生産性が高いことがありました。

また、遠郊農業は促成栽培と抑制栽培に分類され、それぞれ出荷時期をずらすことで、作物の希少価値を高めていました。

分布と作物に関しては、アメリカのメガロポリスの野菜とオランダのチューリップ、日本の代表例を覚えておくと良いでしょう。

上記のような園芸農業の特徴と園芸農業が行われている地域の特徴を関連づけて覚えることで、記憶に定着しやすく、試験にも活かされるでしょう。

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