ナウル共和国はオセアニアの島国であり、バチカン、モナコに次いで世界で3番目に面積が小さい国です。国土面積は21平方キロメートル。東京ドーム450個分です。
実はこのナウル島はサンゴ礁の上に海鳥の糞が積み重なりできています。鳥糞は長い年月により化石化しています。つまり、ナウルの人々は鳥糞の化石の上で暮らしているということになります。
長い年月をかけ鳥の糞はリン鉱石に変わる
実はナウルの化石化した鳥糞はナウルに大きな恩恵をもたらしました。鳥の糞の化石にリンが含まれており、リン鉱石として採掘できるためです。採掘されたリンの用途は肥料です。ナウルからは20世紀末まで外国にリン鉱石を輸出することで莫大な利益を得ました。
鳥の糞が島に堆積して化石になったものを「グアノ」と呼びます。糞の中のリン成分が濃縮されるためには降水量が多く、湿度が高い事が必要ですが、ナウルの気候はその条件を満たすためにリン鉱石が取れるようになったのです。
リンは必須元素
リンは我々の体内では、細胞膜、骨の成分、DNAなどに含まれる必須元素です。リン元素は体内で合成できません。そのため食べ物として取り入れなければならない元素です。我々は肉や魚、穀物などあらゆる食品からリンを摂取しています。
植物も生物であるため成長にはリンが必要であることは理解できると思います。そう考えると野菜は土壌からリンを吸収し蓄積します。同様にリンを蓄積した牧草を牛が食べ牛にリンが蓄積されます。このように多種の生物を介してヒトにリンが供給されています。
では植物はどこからリンを得ているのか。それは土壌からリン酸として吸収しますが、やせた土地や長期間同じ場所で栽培した土地は養分が不足しているため、肥料を与えることで補います。リン、窒素、カリウムは土の中で特に不足しがちな元素で、肥料として与える必要があります。この3つの元素を肥料の三要素と呼びます。
肥料に含まれるリンの大部分はリン鉱石由来です。つまり大雑把なリンの流れは、化石の鳥糞→肥料→植物→草食動物→ヒトという事になります。
リンはリサイクルできない
リンはヒトの体内、食品、植物、肥料など身近に存在する必須元素ですが、リン鉱石は限られた場所に局在しています。それを肥料として使うと、川や海などへ流れリンが分散してしまうため、もう一度集めることはできません。生物に吸収されたリンを回収することも困難です。つまり、アルミニウムのようにリサイクルできないのでリンの枯渇の進行は深刻であると言われています。
ナウルのリン鉱石は枯渇した
ナウルも一時期はリン鉱石により豊かな国でしたが、リン鉱石以外の産業がほぼゼロだったためリン鉱石を採り尽くした後、国は衰退してしまいました。また島を削り取っているわけなので、海面上昇も合わせて島が海に沈んでしまうことも懸念されています。ナウルだけの問題でなくて、世界的に見てもリンの枯渇は肥料不足から食糧問題にもつながるため深刻です。
今後はさらにリンが枯渇する
現在は鳥の糞の化石からのリンの採取ではなくて、古代の動物の化石によるリン鉱床がアメリカなどで見つかり、大半はこちらから供給されています。いずれ世界中のリン鉱石が枯渇してしまうでしょう。それまでに画期的なリンの供給法が実現することに期待しましょう。