高校地理ではハイサーグラフによって気候を表現する方法を学びます。見慣れないグラフに戸惑う人は多いですが、コツさえつかめば簡単に理解できます。
ハイサーグラフは気温と降水量を記載しているだけで、結局は雨温図と全く同じ内容であることが重要なポイントになります。
またハイサーグラフには気候ごとに特徴的な形があります。そこで全ての気候区分におけるハイサーグラフの見方を詳細に説明していきます。
ハイサーグラフは雨温図と同じ内容
ハイサーグラフと聞いてアレルギー反応を起こす人は多いですが、難しく考える必要はありません。ハイサーグラフは縦軸に気温、横軸に降水量をとり、各月の気温と降水量が一致する点を1月から12月まで結んだグラフです。
要は表現されるグラフは雨温図と完全に同じであることに気づきましょう。もしもハイサーグラフが苦手であれば「ハイサーグラフ→雨温図」に手書きで変換しましょう。そうすればハイサーグラフのパターンは覚える必要はありません。
余裕のある人はハイサーグラフの特徴について覚えても良いです。そうすれば、試験中にハイサーグラフを見れば、その瞬間に回答できるからです。
以下ではハイサーグラフからケッペンの気候区分を見分ける方法について説明していきます。
ハイサーグラフから夏と冬を見分ける
ハイサーグラフを考えるとき、夏と冬を見分けられないと話になりません。ケッペンの気候区分を判別する前にハイサーグラフから季節を見分ける方法を説明します。
ハイサーグラフでは縦軸(y軸)が気温を表現します。そのため以下のように横棒でハイサーグラフを挟みましょう。
このとき、以下のように上部の接点が夏、下部の接点が冬になります。
札幌では8月に最高気温(夏)になり、1月に最低気温(冬)になります。この結果から札幌は北半球の都市であることが分かります。それでは南半球ではどのようなハイサーグラフになるか確認してみましょう。
上記はカイタイア(ニュージーランド)のハイサーグラフになります。これについても平行線でハイサーグラフを挟めば簡単に夏と冬が分かります。南半球では1月に冬、8月に夏が訪れることが分かります。
熱帯気候(A)のハイサーグラフの特徴
ケッペンの気候区分では熱帯気候は以下の3つに分類されます。
- 熱帯雨林気候(Af)
- サバナ気候(Aw)
- 熱帯モンスーン気候(Am)
このうちAfとAwについては重要であり、他気候のハイサーグラフと見分けられるようにしておきましょう。
熱帯雨林気候(Af)は一点集中する
熱帯雨林気候(Af)は基本的に赤道直下に位置します。そのため一年を通して高温であり、降水量も常に多いです。その結果ハイサーグラフは一点集中します。例えば、以下はコロンボ(スリランカ)のハイサーグラフになります。
上記のようにハイサーグラフが上部の高温域で、グチャっと一点集中しているのが熱帯雨林気候(Af)の特徴になります。
サバナ気候(Aw)は冬にy軸に接する
サバナ気候は冬に寒気が訪れる熱帯気候になります。冬にハイサーグラフがy軸に接しているのがサバナ気候(Aw)になります。例えばダーウィン(オーストラリア)のハイサーグラフは以下のようになります。
なお熱帯であってもy軸に接しているということは降水量=0mmであるため、計算等をしなくても乾季だと判断して良いです。
ちなみに熱帯気候であれば歳寒月平均気温は18℃以上であるため、「y≧18」の領域にグラフが存在することも押さえておきましょう。これはAfやAmでも当てはまります。
熱帯モンスーン気候(Am)はy軸に接しない
熱帯モンスーン気候(Am)はモンスーンの影響で乾季が存在しない熱帯気候になります。ただし熱帯雨林気候(Af)ほど降水量が多くありません。具体的にはマカパ(ブラジル)のハイサーグラフを確認しましょう。
上記のハイサーグラフはy軸と接していないことが分かります。これは乾季が存在しないことを意味しています。なおかつ歳寒月平均気温(グラフの最小値)が18℃以上であるため熱帯であることが分かります。
乾燥帯(B)のハイサーグラフ
ケッペンの気候区分では乾燥帯は以下の2種類に分類されます。
- 砂漠気候(BW)
- ステップ気候(BS)
イメージとしては降水量が少ないのがBW、少し多いのがBSと考えておきましょう。そうしたイメージを持ってハイサーグラフを確認して行きます。
砂漠気候(BW)はグラフがy軸に張り付く
砂漠気候は年間を通して降水量が少なく、ほとんどの月で「x=0」になります。そのためハイサーグラフはy軸に張り付いて縦一直線になります。具体的にはタクラマカン砂漠に近いクチャという都市のハイサーグラフを確認しましょう。
上記のように縦一直線のハイサーグラフになっていることが分かります。これが砂漠気候(BW)の特徴になります。
ここで注意点ですが、「砂漠=暑い」と思っている人が多いですが、実際には異なります。なお上記のタクラマカン砂漠は標高も高いため、冬の平均気温は氷点下になっています。
ステップ気候(BS)は半分くらいy軸に接する
ステップ気候(BS)のイメージは雨季のある乾燥帯です。乾燥帯である以上、降水量=0が基本です。そのため、ほとんどの月はy軸に張り付いています。しかし雨季になると降水量が増加するためy軸から離れます。
以下はンジャメナ(チャド)のハイサーグラフになります。
上記のように年間の半分はy軸と接していることがステップ気候(BS)の特徴です。しかし雨季があるため8月や9月は降水量が200mmまで伸びていることが分かります。
温帯気候(C)のハイサーグラフ
ケッペンの気候区分では温帯気候は以下の4つに分類されます。
- 地中海性気候(Cs)
- 温暖冬季少雨気候(Cw)
- 温暖湿潤気候(Cfa)
- 西岸海洋性気候(Cfb)
4つの温帯を区別するとき、降水量に注目することになります。見分けやすいハイサーグラフから順番に説明して行きます。
地中海性気候(Cs)は夏にy軸に接近する
地中海性気候では夏に乾燥することが重要なポイントになります。こうしたパターンは日本人には馴染みがないため、テストで頻出です。ぜひとも地中海性気候のハイサーグラフは見分けられるようにしておきましょう。
実際にケープタウン(南アフリカ)のハイサーグラフを確認してみましょう。
夏にハイサーグラフがy軸に接近していることが分かります。これが地中海性気候(Cs)の最大の特徴になります。このときハイサーグラフの「8」「9」などの月に騙されないように注意してください。
日本人は8月は夏というイメージがありますが、上記のハイサーグラフは8月は冬であることに気づきましょう。
温暖冬季少雨気候(Cw)は冬にy軸に接近する
そろそろ意味不明になってくる方もいるのではないでしょうか。ここでケッペンの気候区分の基本的な考え方を復習しておきましょう。ケッペンの気候区分は以下のように最暖月平均気温や最寒月平均気温で分類されます。
ここでは温帯について考えているため、ハイサーグラフの最小点は「3℃<y<18℃」の範囲にあることを確認しましょう。
その上で温暖冬季少雨気候(Cw)は冬に乾季のある気候になります。例えば香港のハイサーグラフは以下のようになります。
ハイサーグラフの最下点がy軸に接近していることが分かります。これが温暖冬季少雨気候(Cw)の特徴になります。
温暖湿潤気候(Cfa)の判別は難しい
乾季がなくなるとハイサーグラフの形状はどのように変化するかイメージしましょう。まずはy軸から離れた領域にグラフが描かれます。以下は東京のハイサーグラフになります。
しかし、温暖湿潤気候(Cfa)をハイサーグラフのみから見分けるのは難しいです。そのため実践的には消去法で選択するのが賢いです。少なくとも乾季が存在せずy軸に接しないことは覚えておきましょう。
西岸海洋性気候(Cfb)は降水量一定
ケッペンの気候区分では西岸海洋性気候(Cfb)の定義は複雑です。温帯気候の中でも、「最暖月平均気温が22℃未満かつ月平均気温が10℃以上の月が4回以上」という条件に当てはまるとCfbとなります。
しかしハイサーグラフから数値を読み取り、計算することは求められていません。そのためイメージで攻略するのが良いです。そこでメルボルン(オーストラリア)のハイサーグラフで確認しましょう。
西岸海洋性気候(Cfb)では偏西風の影響を受ける地域が多く、降水量が年間を通して一定になります。その結果、ハイサーグラフは常に同じ降水量(x軸)を示すため縦長になります。
温帯であるため最寒月平均気温は−3℃を下回ることはありません。これはDfbと鑑別する際に役立ちます。
冷帯気候(D)のハイサーグラフ
ケッペンの気候区分では最寒月平均気温が−3℃未満(かつ最暖月平均気温が10℃以上)で冷帯となります。冷帯には降水量のパターンによって以下の2つに分類されます。
- 冷帯冬季少雨気候(Dw)
- 冷帯湿潤気候(Df)
これらをハイサーグラフから見分けるときのポイントについて説明して行きます。
冷帯冬季少雨気候(Dw)は冬(-3℃以下)にy軸に接近
最寒月が-3℃未満だとD になります。なおかつ、気温が低いときハイサーグラフがy軸に接近していると冬乾燥している冷帯冬季少雨気候(Dw)となります。実際にロシアのハバロフスクのハイサーグラフは以下のようになります。
最寒月平均気温が−3℃未満であることと、冬に乾季があることに注目しましょう。そうすればDwについては比較的簡単に判別できます。
冷帯湿潤気候(Df)は乾季が存在しない
最寒月平均気温が−3℃未満ですが、乾季が存在しない場合冷帯湿潤気候(Df)になります。ハイサーグラフではy軸にグラフが接近しないことが特徴です。例えば札幌のハイサーグラフは以下のようになります。
最寒月平均気温が−3.2℃なのでギリギリ冷帯気候に区分されます。夏の気温が高いため温帯と勘違いするかもしれませんが、冷帯と温帯を区別するのは「最寒月平均気温」であることに注意しましょう。
なおケッペンの気候区分ではDf気候はDfaやDfbに分類されます。詳細な分類方法は以下のようになります。
しかしハイサーグラフや雨温図の読み取り問題で問われることはありません。そのため実践的には冷帯機構はDwとDfの2つと考えた方が効率的です。
寒帯気候(E)のハイサーグラフ
ケッペンの気候区分では寒帯気候は以下の2つに分類されます。
- ツンドラ気候(ET)
- 氷雪気候(EF)
ツンドラ気候はグラフの頂点が0<y<10
ツンドラ気候は最暖月平均気温が10℃以下、0℃以上であるため、ハイサーグラフの頂点を確認すればすぐに判別できます。例えばディクソン(ロシア)の雨温図は以下のようになります。
なおツンドラ気候を区別するとき降水量は関係ありません。たとえy軸に接近していたとしても砂漠気候と見間違えないようにしましょう。
氷雪気候(EF)はグラフの頂点がy<0
氷雪気候では最暖月平均気温が0℃未満であるためハイサーグラフの頂点を確認すればすぐに分かります。以下は南極にあるボストーク基地のハイサーグラフになります。
ちなみに南極では極高圧帯という高気圧に覆われているため降水量は年間を通してほとんどありません。そのためハイサーグラフはy軸に張り付いていますが、砂漠気候と見間違えてはいけません。
ハイサーグラフの頂点が0℃未満であることを見落とさないようにしましょう。ちなみに氷雪気候(ET)が存在するのは南極とグリーンランドになります。