海岸には様々な地形がみられますが、今回は砂で形成された海岸地形を見ていきたいと思います。特に「潟湖・砂州・砂嘴・陸繋島」は地理の試験で頻出であるので覚えておきましょう。

また、これらの地形は似ていますが、テストでは形成過程の違いなど細かい部分まで問われるため注意しましょう。

砂嘴と砂州の違いをイラストでわかりやすく解説

海岸近くの地形は沿岸流(えんがんりゅう)の影響を大きく受けます。沿岸流とは海岸のすぐ近くにある流れのことを言います。基本的に沿岸流は海岸にほぼ水平に流れ、この方向に砂や土砂を運びます。

沿岸流は一定の方向に流れているため、沿岸流によって運ばれた砂は同じ所に堆積します。その結果としてできる地形として砂嘴(さし)砂州(さす)があります。

これらの違いを分かりやすく示すため、イラストで解説します。以下は砂嘴が形成される様子です。黒い矢印は沿岸流を示しています。

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図の左から右へと沿岸流が流れ、それに運ばれた砂が堆積しており、この部分を砂嘴と呼びます。砂嘴の特徴として、鳥のくちばし状に砂が堆積することがポイントです。しかし、なぜこのように砂嘴の先端は回り込むような形状となるのでしょう。

沿岸流の流れに沿って砂は堆積するため、沿岸流が回り込んでいるからということになります。ちなみに、これは物理の授業で学習する波の性質を考えれば納得できる現象です。波は障害物があると裏側に回り込もうとする性質があり、これを回折(かいせつ)と呼びます

これがリアルな海でも発生しているため、砂嘴の先端は鳥の嘴(くちばし)のようになります。なお、砂嘴に砂や土砂が供給されると沿岸流によって砂が運ばれ、砂嘴の先端は延びていきます。その結果、入江が塞がれた形になります。以下はその様子をイラストにした図です。

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このように完全に入江になった状態、あるいはほとんどが塞がった状態に堆積した堆積地形を砂州(さす)と呼ばれます

また、砂州によって外側の海から切り離されてしまった部分は潟湖(せきこ)と呼ばれます。ちなみに、潟湖は英語でラグーンと呼ばれ、同じ意味になります。

日本最大の砂嘴は根室の野付半島

周囲の河川からの土砂の供給が豊富である場所や浅瀬が続く海岸では土砂が堆積するため、砂嘴ができやすいです。こうした場所は世界中にあります。例えば、アメリカではコッド岬、日本では三保の松原などが有名です。また、日本最大の砂嘴は北海道の根室市にある野付半島(のつけ半島)です。以下は野付半島の地形図になります。

出典:地理院地図

上図を見ると、砂嘴には道路が通っており、先端部分まで行けることがわかります。また、地形図を拡大すると分かりますが、等高線がほとんどありません。要するに、砂嘴は標高差がなく、平らな地形であることが理解できるはずです。

砂嘴は砂が溜まってできた地形であるため、必然的に低地となります。こうした砂嘴の低地はどのようなことに利用されているのでしょう。これを確認するために地図記号を見ると、荒地や広葉樹林となっていることが分かります。

塩分を多く含む土壌では農作物の栽培は難易度が高く、人間が手をかけない土地になっています。また、人口の少ない地域であるため放置されているのです。しかし、そうした環境は野生動物にとっては好都合です。そのため、動物の餌となる植物が自生し、タンチョウをはじめとする渡り鳥が数多く飛来します。

こうした環境を守るため、野付半島は鳥獣保護区に指定されています。また、湿地の保存に関する条約(ラムサール条約)の登録地にもなっています。

天橋立は砂州の代表例

砂州についても同様に、世界各地で見ることができます。例えば、世界最大の砂州はウクライナにあるアラバト・スピットと呼ばれる地域であり、砂州の前兆は112kmにも及びます。

出典:GoogleEarth

日本で有名な砂州といえば京都にある天橋立(あまのはしだて)です。天橋立は日本三景の一つであるため、全国から多くの観光客が訪れます。ちなみに、砂州に松が茂っている地形が天にかかる橋のように見えることから「天橋立」と名前がつけられたそうです。

天橋立地形図で確認すると次のようになります。

出典:地理院地図

なお、過去に天橋立は侵食により細くなり消失の危険性がありました。これには様々な要因がありますが、その一つの理由として河川のダム建設があります。

天橋立は周囲の河川から供給される土砂が沿岸流によって堆積してできています。しかし、その河川にダムが建設されたことで山地から海へ供給される土砂が減ってしまったのです。

こうした事態を食い止めるため、砂を別の場所から持ってきて砂州を太くしたり、天橋立に土砂が流れやすいような工事をしたりすることで景観が保護されているのです。

潟湖(ラグーン)の定義や特徴

湾口に発達した砂州によって外海とは切り離されてできた湖を潟湖(せきこ)と言います。潟湖は英語ではラグーンと呼ばれ、両者は同じ意味となります。

潟湖の特徴として、「塩湖」「波が穏やか」「水深が浅い」という2つの特徴があります。元々は海だったため、塩湖であることは想像しやすいです。また、砂州が防波堤の役割を果たすことから、潟湖では荒波が少なく、穏やかな環境となります。

こうした環境は養殖に適しています。例えば、牡蠣は穏やかな水域で育てなければいけません。そのため、北海道のサロマ湖では牡蠣の養殖が盛んです。また、静岡県の浜名湖ではウナギの養殖が盛んです。

また、潟湖が形成する過程は前述の通り、土砂が堆積することです。要するに、潟湖ができる場所は土砂が簡単にたまるほど浅い場所であるのです。例えば、静岡県の浜名湖は水深約16m、島根県の中海では約17mです。

陸繋砂州(トンボロ)、陸繋島の違いや特徴

沿岸に島がある場合、島の裏側は波が穏やかになります。そうした部分は沿岸流が運ぶ砂が堆積しやすくなります。陸と島の間に砂が堆積し、陸地化すると陸繋砂州(りくけいさす)と呼ばれる地形になります。また、陸系砂州はイタリア語でトンボロと呼ばれます。

また、陸繋砂州の漢字を見るとわかりますが、陸と繋がった砂州ということになります。ちなみに、元々は島だった部分は陸続きになり、陸繋島(りくけいとう)と呼ばれるようになります。陸繋砂州(トンボロ)と陸繋島の位置関係をずに示すと以下のようになります。

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陸繋島および陸繋砂州の代表例として神奈川県の江ノ島が有名です。江ノ島はもともと島でしたが、現在は陸繋砂州によって陸続きになっています。また、北海道の函館も陸繋砂州(トンボロ)の上に発達した街になります。

以下の写真はフェリーから見た函館山です。この島の裏側に砂がたまり、陸繋砂州(トンボロ)が形成されました。

 

以下の写真は函館山から見た函館市街です。函館市街の街灯りは絶景であり、日本三大夜景にも数えられる名所となっています。

地形図で見ると、函館山は山なので高低差があり等高線が入っていますが。一方で、函館市街は砂が堆積してできたトンボロなので高低差は無く等高線は見られません。こうした特徴は地形図問題で陸繋島が出題されやすいので覚えておきましょう。

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出典:地理院地図

このように、函館の夜景は陸繋島と陸繋砂州という地理的条件があることで見られる景色であるのです。

陸繋砂州の代表例は秋田県の八郎潟

なお、陸繋砂州が同時に2本作られ、その間に潟湖ができることもあります。その代表例が秋田県の八郎潟(はちろうがた)です。以下は八郎潟の地形図ですが、元々湖だった場所が干拓され、陸地になっていることに注意しましょう。

出典:地理院地図

潟湖は水深が浅いため、干拓や埋め立てなどで陸地化しやすい土地です。もともとは湖であったため水持ちがよく、陸地化した土地は標高差の無い平坦な土地となります。

こうした条件の土地は稲作に適しているため、干拓部分のほとんどは水田となりました。八郎潟の干拓は戦後の米不足を解消するために行われたものなのです。詳細については以下のページで確認してください。

まとめ

海岸付近には砂が堆積してできる特徴的な地形が見られます。その代表例として砂嘴と砂州があります。沿岸流によって砂が運ばれることで砂嘴ができ、砂嘴が成長することで砂州に発達します。また、砂州によって外海と切り離された湖ができると潟湖と呼ばれるようになります。

砂嘴の代表例として北海道野付半島、砂州の代表例として京都府の天橋立を紹介しました。それぞれの地形図を見て、砂嘴と砂州の違いが理解できるようになりましょう。

さらに、海岸の近くに島がある場合は、島と陸の間に砂がたまりやすく、陸繋砂州(トンボロ)が形成されます。このとき、陸続きになってしまった島は陸繋島と呼ばれます。

陸繋砂州、陸繋島の代表例として北海道の函館市を紹介しました。さらに、2本の陸繋砂州によってできた潟湖が干拓された秋田県の八郎潟についても触れました。

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