小麦はパン、麺類などの原料となる穀物で、人間の主食となります。その生産量も多く三大穀物(米、小麦、とうもろこし)にも含まれています。小麦には幾つかの品種があり種をまく時期が異なるため、冬小麦と春小麦に分類されます。
ライ麦もパンの原料となる穀物です。ライ麦から作られたパンはライ麦パン、黒パンと呼ばれます。ライ麦は小麦より低温に強いためドイツやロシアなどの北国で生産が多く、主食となる穀物です。
冬小麦と春小麦の違い
冬小麦:秋に種をまき、初夏に収穫する。(冬を越す)
春小麦:春に種をまき、秋に収穫する。(冬を越さない)
小麦の栽培条件は植物が盛んに育つ育成期の気温が月平均14℃程度。収穫前の成熟期に月平均20℃程度。年降水量は500mm~750mm程度ですが、品質の違いで種をまく時期が異なり、冬小麦と春小麦に分けられます。冬を越す冬小麦、冬を越さない春小麦ということになります。
パリの雨温図 左軸:降水量(mm)、右軸:月平均気温(℃) |
ウィニペグの雨温図 左軸:降水量(mm)、右軸:月平均気温(℃) |
基本は冬小麦、寒い地域は春小麦
世界の小麦は春小麦より冬小麦の方が多く生産されています。小麦は本来、秋に種をまき、冬を越して夏に収穫する穀物です。しかし、ロシア、カナダ、アメリカ北部など冬の気温が低くなりすぎる地域では通常の小麦は冬を越すことができません。そこで栽培期間の短い品種を扱い、春に種をまき秋に収穫するのです。
アメリカと中国の小麦事情
アメリカと中国は面積が大きいため地域を分けて、冬小麦と春小麦の両方を栽培することができます。そのため小麦の生産量は世界でも上位に入ります。しかし、アメリカと中国の小麦事情は少し異なります。
アメリカは小麦の輸出大国です。企業が小麦を商品とし海外へ売ることでお金儲けをする企業的穀物農業です。小麦の栽培に適した土壌であるプレーリー土が分布する地域一体で大規模に生産します。冬小麦はカンザス州・オクラホマ州、春小麦はノースダコタ州で広く栽培されています。
一方中国は小麦の生産量は世界一ですが、輸出量は多くありません。中国は人口が多いため生産した小麦は中国人がほとんど食べてしまうのです。これを自給的農業と言います。中国は南部で稲作がおこなわれますが、北へ行くほど小麦が栽培されるようになり、モンゴルやロシア、韓国の国境付近では春小麦が栽培されます。
ライ麦は小麦より寒い地域で栽培可能
ライ麦は小麦より低温で発芽することができるため、小麦が栽培できない寒冷地でも栽培することができます。下の図は2012年のヨーロッパにおける小麦とライ麦の生産上位国に色を付けたものです。
小麦よりライ麦の方が北で栽培されていることがよく分かります。イギリスは北大西洋海流の影響で暖かいのでライ麦栽培は少ないのです。ロシアは除外し、両方にランクインしているドイツとウクライナは南北で色分けしています。
ライ麦・小麦の生産が多いヨーロッパの国
なお下図の生産量を見ると分かるように、世界三大穀物である小麦の生産量が圧倒的に多いことが分かります。ライ麦で色を付けた国でも、小麦の方が量としては多く栽培されています。