カルスト地形は地理分野で非常に重要な地形です。ドリーネやウバーレといった特徴的な地形があり、カルストを行使する石灰岩はセメントの原料となることなど、ポイントが多いからです。

しかし、カルスト地形を苦手とする学生は多いです。中には火山地形のカルデラと混同してしまう人もいます。そこで、ここではカルスト地形についてわかりやすく解説します。

カルスト地形のでき方や特徴

カルスト地形は雨水や地下水などによって溶かされて形成した地形を言います。カルスト地形ができるとき、水によって「溶かされる」と言うことが重要なポイントになります。

水によって形成される土地の代表例としてV字谷がありますが、これは水によって削り取られてできる地形です。一方でカルスト地形は化学的に岩盤が溶かされて独特な地形が現れます。

カルスト地形は石灰岩が二酸化炭素を含む水に溶かされてできます。石灰岩の主成分は炭酸カルシウムであり、そこに二酸化炭素と水が化学反応することで、炭酸水素カルシウムとなります。

炭酸カルシウムは水に溶けず個体ですが、炭酸水素カルシウムとなると水に溶けるのです。この反応を化学式で表すと以下のようになります。

石灰岩がある地域では雨水や地下水の影響でカルスト地形ができやすいのです。ちなみに、石灰岩地域は世界のいたるところに存在します。

石灰岩の主成分である炭酸カルシウムはサンゴなどの化石や温泉水に含まれることが多いです。そのため、かつてサンゴが生息していた浅瀬が隆起して陸地化した土地、あるいは温泉が湧き出る地域の近辺に石灰岩地形が見られます

こうした地形に二酸化炭素を含む雨水や地下水が流れることでカルスト地形は出来上がります。それでは、ここからカルスト地形に見られる地形の特徴について説明します。

ドリーネは落ちたら怖い、すり鉢状の落とし穴

カルスト地形では雨水などにより地形が溶かされています。すると窪地・凹地(おうち)と呼ばれる、へこんだ地形が見られるようになります。カルスト地形の場合は溶食凹地(ようしょくおうち)とも呼ばれるため覚えておきましょう。

なお、カルスト地形に見られる直径数m~数百mの窪地はドリーネと呼ばれます。ドリーネは単体の窪地であり、すり鉢状の地形となっています。ちなみに、ドリーネを地形図で見ると以下のような地図記号で表されます。

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高さの違いを地形図で表す場合は等高線を用いますが、1/25000の地図では等高線は10mおきに引かれているので、10mより浅い窪みは表現できません。

そこで図のように等高線で囲まれた内側に向けて矢印を書いて窪地を表現しています。または、等高線の内側に線を書いて影を表現します。「盛土部」「切土部」と同じように、線がある方が低いです。

それでは実際の地形図で確認して見ましょう。以下は山口県にある秋吉台と言う地域の地形図です。ここは日本で有名なカルスト地形であり、ドリーネが無数に存在していることが分かります。

出典:地理院地図

こうした観光地ではドリーネに人が落ちないようにロープが張り巡らされていることが多いです。ドリーネは落とし穴のようになっているため、落ちてしまうと怪我をします。実際に事故が起こったこともあるので、むやみにドリーネに近づいてはいけません。

実際のドリーネは以下の写真の奥に広がっています。こうして見ると、落ちたら怪我をしそうな雰囲気が伝わってきます。

出典:日本ジオパーク

ちなみにドリーネの語源はスロベニア語であり「擂鉢穴・落込穴」といった意味があります。また、英語ではsinkholeと呼ばれることもあります。

ウバーレ・ポリエはドリーネの集合体、鍾乳洞は地下の洞窟

前述のドリーネは独立したカルスト地形にある独立した窪地でした。しかし、雨水の溶食作用により徐々にドリーネが拡大すると、付近にあるドリーネ同士が連結することがあります。

こうして複数のドリーネが繋がって大きな窪地となった地形をウバーレと呼びます。ドリーネは綺麗なすり鉢状の窪地であることが多いですが、ウバーレは複数のドリーネが繋がっているため、いびつな形をしていることが多いです。

さらに、溶食が進むと大規模な盆地が出来上がります。これをポリエ(溶食盆地)と呼びます。ポリエはそこ面積が100mから数百mになることがあり、盆地の中に都市が形成されることもあります。

また、石灰岩が地下水によって削られると洞窟ができます。こうした地形は鍾乳洞と呼ばれ、以下のような地形になります。

鍾乳洞では天井からツララのような突起状の石灰岩が見られます。これは鍾乳石(しょうにゅうせき)と呼ばれます。また、鍾乳石の下にはタケノコ状の石筍(せきじゅん)が見られることもあります。

山口県にあるカルスト地形は秋吉台(あきよしだい)ですが、その地下100mには鍾乳洞である秋芳洞(あきよしどう)が広がっています。

カレンフェルトは石灰岩柱が林立したカルスト地形

石灰岩が雨水によって溶かされるとき、均等に溶かされるわけではありません。石灰岩に起伏があるため、雨水が川となって流れる場所は溶食作用が大きくなります。そのため、雨水が流れる部分は溝となり、それ以外の場所は石灰岩が残ります。

こうした地形では複数の岩柱が立ち並び、以下のような景色になります。このような地形のことをカレンフェルトと呼びます。

出典:おいでませ山口

このように林立した石灰岩柱は暮石が並んでいるように見えることから暮石地形と呼ばれることもあります。また、羊の群れのように見えることから羊群原と呼ばれることもあります。

タワーカルストの代表例は中国の桂林(コイリン)

また、中国の桂林(コイリン)にはタワーカルストと呼ばれる地形がみられます。タワーカルストができる原理はカレンフェルトと同じです。

雨水が流れる場所では溶食作用が強くなり石灰岩が削れていきます。それ以外の場所では石灰岩が残ります。

桂林は高温多雨の気候であるため溶食作用が強く、削られる溝が深くなりました。溶食は化学反応であるため、温度が高いほど反応は早く進むのです。また、桂林の石灰岩地形は日本の秋吉台よりも分厚いため、取り残された石灰岩が巨大なものとなりました。

こうしてできた地形はタワーカルストと呼ばれ、以下のように雄大な地形が形成されました。


桂林は世界遺産にも登録されており中国有数の観光地となりました。川を下りながら地形を楽しむツアーなどもあり多くの観光客が訪れます。

カルスト地形の問題では地形や土地利用が問われる

地理の問題でカルスト地形を出題するとき、地形問題が出題されやすいです。例えば、前述のように窪地の地図記号からドリーネであることを考えさせられるような問題が頻出です。それだけでなく、カルスト地形にはもう一つ重要なポイントがあります。

カルスト地形には石灰岩が広く分布していますが、この石灰岩はセメントの原料として利用されます。そのため、カルスト地形の近くにはセメント関連の施設や事業所が見られることが多いです。例えば、以下は山口県秋吉町別府の衛星写真です。


この地形図の左側には山肌が削り取られた採石所があり、石灰岩が削り取られていることが分かります。石灰岩は白いため、削った部分が真っ白になっていることが特徴です。

セメントは住宅建設からダム建設に到るまで様々な用途で使用されます。そのため、セメント需要は日本各地に広がっています。しかし、セメントの原料となる石灰岩が採掘できる場所は限られています。例えば、山口県の秋吉鉱山、高知県の勝森鉱山などがあります。

このように偏在した石灰岩を全国に届けるには効率的な輸送ルートの確保もが必要となります。そこで、地図上にある住友大阪セメントでは採掘した石灰岩を運ぶためのベルトコンベアーを建設していることが分かります。

このベルトコンベアーは約16.5km離れた長門市仙崎の港まで続いています。ここから船に積み込み、石灰岩をセメントに加工する工場に運びます。完成したセメントは再び船に運ばれて日本全国へと供給されるのです。

ちなみに、日本では石灰石の産出が豊富であるため、輸入に頼る必要がありません。そのため、以下のように船を使った輸送網が発達しています。

出典:住友大阪セメント

輸送手段として船舶が選ばれる理由は石灰岩は体積・質量ともに大きいため、自動車や列車での輸送はコストがかかってしまうからです。当然ながら、飛行機での輸送はありえません。

ヨーロッパでのカルスト地形の例

ヨーロッパの地中海沿岸ではカルスト地形が発達しています。建築技術が発達する前は石灰岩を切り出して家の壁に利用していました。そのため、地中海沿いには白い壁の家々が立ち並びます。特に有名なのは以下の写真にあるイタリア南部のアルベロベッロと呼ばれる地域です。


こうした家が作られたのは16世紀から17世紀と言われています。今のように家を建てるときに住宅会社に頼むことはできません。そのため、近くで採掘できた石灰岩を利用して農民が自分たちで家を作ったのです。

このように石灰岩を利用した伝統的な家々は世界遺産に登録されているため、世界中から観光客を集めています。

また、地中海沿岸には石灰岩地形が広く分布しており、カルスト地形も多いです。こうした地域には石灰岩が風化してできたテラロッサという土壌が広がっています。

石灰岩に含まれる炭酸カルシウムは酸性雨などの影響で溶けてしまいますが、炭酸カルシウム以外の成分(水酸化鉄、水酸化アルミニウムなど)は残ります。この残りカスがテラロッサとなります。テラロッサ土壌は鉄分の色により赤褐色となります。

私はテラロッサを覚えるとき、「ヨーロッパ」「テラロッサ」と響きが似ているなという感じで暗記していました。ブラジル高原に分布するテラローサと混同しないようにしましょう。

まとめ

カルスト地形は石灰岩が分布する地域で頻繁に見られます。石灰岩は雨水や地下水によって化学的に溶けるため、ドリーネなどの窪地ができます。また、ドリーネが複数繋がった窪地はウバーレと呼ばれます。さらに大規模な窪地になるとポリエと呼ばれるようになります。

そのほかにも鍾乳洞、カレンフェルト、タワーカルストなどカルスト地形で見られる地形は多いです。こうした地形は非常に風光明媚であるため、観光地になっている例が数多くあります。

また、石灰岩はセメントの材料となるため近辺にセメント関連の工場や施設があることが多いです。ヨーロッパの地中海沿岸では石灰岩が風化したテラロッサが分布し、赤褐色の土壌が見られる地域もあります。

こうした特徴を整理しておけば、カルスト地形の問題が出題されても迷わず回答することができます。

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