放牧・遊牧・移牧の違いを簡単に説明、どこに移動するかがポイント

家畜を育てる牧畜として放牧、移牧、遊牧と似た名前の方法がありますが、これらは違いがあります。また、似ているということは、試験問題で引っ掛けるポイントになります。

そのため、これらの違いを明確に理解しておかなければいけません。そこでここでは、放牧、移牧、遊牧について特徴や違いについて説明します。

放牧は家畜を移動させず、同じ場所で育てる

放牧の特徴として、年間を通して同じ場所で家畜を育てることが挙げられます。また、一年中同じところで家畜を育てられるということは、飼料が豊富・牧草が育つための雨が降る、牧草を育てるための肥料も充実しているという条件が必要となります。

放牧をするメリットは、家畜を放し飼いにすることで飼育小屋を作る必要がなくなり、コスト削減につながります。また、家畜はストレスなく運動できるため、品質がよくなります。

放牧が行われる国の代表例

北米で盛んに行われるフィードロットは放牧に分類されます。フィードロットは英語の意味どおり、「餌をたくさん与える」ということです。

フィードロットは肉牛に試料を大量に与えて太らせ、大量の肉を生産する方法で特にアメリカで発達しています。基本的にフィードロットは柵のなかに牛を閉じ込めて育てます。つまり移動しません。

また、オーストラリアでも放牧が盛んに行われています。オーストラリアでは牛や羊が放牧されますが、その場所に特徴があります。

牛を育てるには羊よりも水が必要であるため、降水量の多い東海岸で牛の放牧が行われています。一方、羊は乾燥地域でも飼育できるため内陸でも放牧が行われます。それぞれの分布を地図に表すと以下のようになります。

ただし、オーストラリアのグレートアーテジアン盆地では、湧き水が豊富であるため、牛の放牧が可能となります。ちなみに、グレートアーテジアン盆地の湧き水は地下から勝手に水が湧き出てくるため自噴井(じふんせい)と呼ばれます。

遊牧は家畜を連れて水平移動する

年間を通して家畜の餌や水が確保できない場所もあります。そうした地域では餌や水が確保できる地域に家畜を引き連れて移動しながら飼育する方法が取られます。こうしたスタイルを遊牧と呼びます。移動方式は基本的に水平移動となります。

また、遊牧をする民族を遊牧民(遊牧民)と呼びます。特に、モンゴルの遊牧民が有名であり、彼らは独自の文化を発展させてきました。

モンゴルの遊牧民族はなぜ移動する?

モンゴルは内陸にあるため雨が少なく、砂漠気候です。遊牧民族たちは雨が降る地域へ家畜とともに移動しながら生活しています。その際用いるのがモンゴルではゲル、中国ではパオと呼ばれる移動式のテントです。

雨が多い年は牧草が生い茂るため、移動の距離は短くなりますが、雨が少ない年の場合は、牧草を求めて100km以上も離れた場所へ移動して生活します。

上記の写真を見てわかる通り、近くにコンビニやスーパーはありません。そのため遊牧民族は自給自足の生活を行なっています。

家畜から取れるミルクからバターやチーズを作り、肉も食べます。また、移動のために馬などの家畜に荷物を運んでもらいます。

ただ、近年では遊牧民族でもインターネットを使いこなして、観光客にゲルの見学ツアーをする人も現れました。そのため、太陽光パネルをゲルに取り付けるなど、現代のスタイルに合わせた遊牧が行われています。

北国ではトナカイの遊牧が行われる

ツンドラ地域ではトナカイを家畜として遊牧をしています。サンタクロースのようにトナカイを移動手段としても使うし、さらに食用にもするし、毛皮でコートも作ります。

ツンドラ地域では地中に永久凍土があるため、樹木が育たず、コケや地衣類(ちいるい)が育ちます。そのため、農業には不向きな土地であります。しかし、コケはトナカイの餌となるため、トナカイの遊牧が盛んに行われるようになりました。

ただし、冬になるとツンドラ地域は雪や氷に覆われてトナカイの餌となるコケが入手できなくなります。そのため、冬は南に移動してトナカイの餌を確保します。

こうしたトナカイの遊牧をする遊牧民族としてノルウェーのサーミ、カナダのイヌイットなどが有名です。

高山地帯の遊牧では家畜の種類が重要

この他にも、世界には様々な遊牧民族がいます。例えば、チベット高原で遊牧をする民族はチャンパと呼ばれ、ヤクやヤギなどを飼育しながら生計を立てています。またアンデス山脈ではリャマやアルパカと共に暮らす民族がいます。

チベット高原やアンデス山脈はいずれも高山地帯にあり、農業に適していない土地です。そのため、家畜を育てるのですが、高山地帯の気候に耐えられる動物を育てなければいけません。

そこでヤク・リャマ・アルパカは毛に覆われた動物であり、寒さに耐えることができるため、高山地帯での家畜として適しているのです。

移牧は垂直方向に移動する

移牧も放牧と同様に家畜を移動させながら育てる方式ですが、移動のスタイルが異なります。放牧は南北や東西など水平移動でしたが、移牧は標高の低い場所と高い場所を行き来する移動方式をとります。

例えば、ヨーロッパのアルプス山脈で見られる移牧では牛や羊などが家畜として育てられますが、夏は高地、冬は低地へ移動します。

牛やヤギは暑い気候が苦手であり、気温が高いと乳酸が減り、肥育にもよくありません。そこで涼しい高地に移動させ乳を絞りチーズなどを作ります。

なお、アルプス山脈では氷河が削ってできたU字谷の上にはアルプと呼ばれる草原があります。ここにある牧草を家畜の餌にできるため、餌を買う必要がなくなります。

ただし、冬になると標高が高い場所では積雪もあり牧草が不足してしまいます。そこで、麓に降りてきて冬を越します。

スペインのメセタでは羊の移牧が行われる

また、スペインにはメセタと呼ばれる高原地帯が広がっています。メセタの平均標高は600〜700mであり、ここでは羊の移牧が盛んに行われています。

スペインの気候は地中海性気候(Cs)であり、夏は砂漠のように乾燥した気候になります。こうした気候は羊の飼育にデメリットとなるため、高原地帯のメセタに移動します。そして、冬になると麓に降りてきて寒さを回避します。

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